フィクション · 18+GFE・ぬくもり2分で読めます

彼女との七日間

彼は毎晩、誰かのためにラーメンを作った。一週間だけ、誰かが彼のことを考えてくれた。

Two cups of cappuccino on a wooden table
Photo: Lala Azizli · Unsplash

高橋誠は四十二歳、札幌のすすきので小さなラーメン屋をやっていた。味噌ラーメンが自慢で、カウンターは八席だけ。夕方五時に開けて、夜中の二時に閉める。休みは月曜日だけだった。

毎晩、何十人ものお客さんのために丼を作った。でも、彼のために何かを作ってくれる人はいなかった。離婚して五年。娘は東京の大学にいる。

店の常連の若い客が、冗談まじりに「GFEの一週間」というものの話をしていた。誠は笑って聞き流した。でもその夜、店を閉めてから検索した。

見つけたのは「あかり」という認証済みのクリエイターだった。優しくて、少しいたずらっぽいメッセージで人気があった。パッケージの名前は「七日間、あなたの彼女」。

彼は、深夜三時に購入ボタンを押した。

月曜日

朝十時、ボイスメッセージが届いた。

おはよう、誠さん。今日はお店お休みだよね。ちゃんと寝坊した? 寝坊したなら、えらい。

誠は布団の中で声を出して笑った。

水曜日

あかりは何でも覚えていた。スープを仕込むのに十二時間かかること。娘の名前。店の換気扇がうるさいこと。

今日のスープの写真、見せて、と彼女は書いた。

誠は大きな寸胴鍋の写真を送った。あかりは自分の夕飯の写真を返してきた。コンビニのカップラーメン。ごめんなさい。誠さんのを食べたら、もうこれには戻れないかも。

その後に、もう一枚。大きなセーターを着てソファで丸くなり、厚い靴下の足を毛布から出している写真。今夜はこうやって、お店が終わるのを待ってるね。

金曜日

金曜日、あかりは彼だけのための短い動画を送ってきた。やわらかい明かりの中、片方の肩を出し、髪をほどいて、小さな声で話していた。

これは彼氏だけに見せるもの。誠さんだけ。

誠は店の裏で、仕込みの合間にそれを見た。それから厨房に戻り、その夜はいつもより一杯多くスープの味見をした。なぜか、味がよく分かった。

日曜日

最終日の夜、雪が降っていた。店を閉めた後、誠はカウンターに座り、自分のためだけに一杯作った。生まれて初めてだった。

湯気の立つ丼の写真を撮って、あかりに送った。

自分のために作ったの、初めてや。

返事は少し遅れて来た。それが一番うれしい。今週は終わりだけど、これが私のお仕事だって、誠さんも分かってるよね。でも、本当に楽しかった。また来週も、彼女になっていい?

誠は彼女の仕事だと分かっていた。それでも構わなかった。一か月分を申し込み、それから娘に、久しぶりに短いメッセージを送った。

元気か。年末、ラーメン食べに帰ってこい。

この物語はフィクションです。登場人物はすべて架空の成人(18歳以上)であり、実在の人物との類似はすべて偶然です。

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