フィクション · 18+フェムドム · 初めて1分で読めます

ベルベットの扇

黒いベルベットを張った扇。閉じている間は目を伏せて。開いたら、私を見ていい。

A red velvet curtain
Photo: Manos Gkikas · Unsplash

その店は六本木の雑居ビルの地下にあった。看板はなく、扉に小さく店名が書かれているだけだった。翔は扉の前を三回通り過ぎ、四回目にようやくノックした。

扉を開けた女性は、彼の顔を見て微笑んだ。「初めてですね。大丈夫。ここでは、嫌なことは何も起きません。それが最初のルールです」

玲

奥のソファに、ひとりの女性が座っていた。黒いドレス、切りそろえた前髪、手には閉じた扇。扇の骨に、黒いベルベットが張られていた。

翔が見つめていると、彼女は扇の先で、すっと自分の隣の床を指した。

「座って。床に」

翔は座った。

話

何かが始まる前に、玲は話をしたがった。一時間近く。何を求めているのか。何が怖いのか。何は絶対に嫌か。彼女は決して笑わずに、真剣に聞いた。翔は、誰にも話したことのないことまで話していた。

それから、玲は扇を彼の目の前に掲げた。

「これがルール。扇が閉じている間は、目を伏せて。開いたら、私を見ていい。話していいのも、扇が開いているときだけ」

「やめたくなったら?」

「立ち上がって『ベルベット』と言えばいい。それで終わり。すぐに。ここにいる誰も、あなたを変な目で見たりしない。約束する」

「もし、言わなかったら?」

「そのときは、自分について何かを知ることになる」

扇

その夜、翔は扇の音を聞き分けることを覚えた。閉じるときの、乾いた小さな音。開くときの、ベルベットがこすれる柔らかな音。

閉じている時間は長かった。床を見つめながら、彼女の声だけを聞いた。他の客と話す声、グラスを置く音、ときどき、彼の髪に触れる指。そして、扇が開く。顔を上げると、玲が見ていた。それだけで、胸が苦しくなった。

その先、奥の部屋で起きたことは、あの地下に残っている。

午前三時、玲は扇をぱちんと閉じ、彼の手に乗せた。

「持っていて。次に来るとき、私に返して」

扇は今、翔の部屋の本棚にある。ときどき、それを少しだけ開いて、ベルベットの音を聞く。それだけで、顔が熱くなる。

この物語はフィクションです。登場人物はすべて架空の成人(18歳以上)であり、実在の人物との類似はすべて偶然です。

このスタイルの認証済みクリエイター

認証済みクリエイターを見る →

ほかのストーリー

すべてのストーリー すべての経歴