フィクション · 18+フェムドム · 支配1分で読めます

九階の書道教室

一画でも乱れたら、書き直し。彼が半紙に書かされたのは、彼女が彼のために決めた規則だった。

A long hotel hallway with a red carpet
Photo: Sébastien Lavalaye · Unsplash

チラシはマンションのエレベーターに貼られていた。書道教室。個人指導。九〇二号室。大人の方のみ。

拓也は三十四歳の会社員で、筆を持つのは小学校以来だった。それでも、毎朝そのチラシを見ているうちに、なぜか目が離せなくなった。

静香

教室は和室がひとつだけの小さな部屋で、窓の向こうに新宿の高層ビルが並んでいた。静香は五十歳前後で、黒い着物に白い半襟、髪をきっちりと結い上げていた。

「姿勢」と、最初に彼女は言った。「背筋を伸ばして。筆は立てて。息を止めないで」

拓也が書いた「永」の字を、彼女は一目見て半紙ごと脇に置いた。

「もう一度」

十二回書き直して、ようやく彼女は小さくうなずいた。そのうなずきが、拓也には信じられないほど嬉しかった。

規則

三回目の稽古の日、静香は半紙の代わりに一枚の紙を差し出した。

「あなたは字を習いたいのではない」と彼女は静かに言った。「誰かに正されたいのでしょう。見ればわかります」

紙には三つの欄があった。望むこと。決して望まないこと。どこまで。そして一番下に、一語だけ。赤。

「その言葉を言えば、私はただの書道の先生に戻ります。気まずさも、詮索もなし。家で書いてきなさい」

一画ずつ

それから、稽古の後半は別の時間になった。

静香が規則を口にし、拓也がそれを筆で書く。許しなく話さない。 目を伏せて待つ。 褒められたら、礼を言う。 一画でも乱れれば、書き直し。何度でも。

書き上がった規則を、彼女は壁に一枚ずつ貼っていった。彼に正座させたまま、それを声に出して読ませることもあった。彼女が触れることはほとんどない。肩に置かれる手、顎を上げさせる指先。それだけで、何日も体に残った。九階で起きることは、九階に残る。

今、壁には十四枚の規則が並んでいる。拓也の字は、見違えるほど上手くなった。会社の同僚に褒められると、彼は少し赤くなって、「いい先生についているので」とだけ答える。

この物語はフィクションです。登場人物はすべて架空の成人(18歳以上)であり、実在の人物との類似はすべて偶然です。

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