クレアとトムが結婚して8年が経ったころ、トムはついにそれを口にした。
日曜の朝、二人はベッドに横になっていて、コーヒーは冷めかけていた。彼はしばらく黙っていた。それから天井を見つめたまま言った。「ほかの男のことを考えたことある?僕は……君がほかの男といるところを考えるんだ。それで嫉妬するわけじゃない。もっと君が欲しくなる」
クレアは長いあいだ答えなかった。トムが謝り始めるほど長く。
「やめて」と彼女は言って、彼のほうに向き直った。「怒ってないよ。あなたがそれをどれだけ長く抱えてきたのか考えてたの」
ルール
二人は3か月かけてそのことを話した。毎日ではない。何週間も話題に上らないこともあった。でも、いつも正直に。ホットワイフの関係について、試してよかった夫婦のことも、後悔した夫婦のことも読んだ。半分冗談でレストランのレシートの裏にルールを書き、そのレシートをクレアの財布にしまった。
- その瞬間に二人とも望んでいなければ、何も起こらない。
- どちらも一言で止められる。合言葉は「灯台」。
- トムはいつも近くにいる。
- 終わったら話す。必ず。
二人がバルセロナを選んだのは、そこなら誰も自分たちを知らないからだった。
バー
ホテルのバーは、落とした照明と濃い色の木でできていた。クレアはトムの大好きな緑のドレスを着て、計画どおり一人でカウンターに座った。トムは隅のテーブルで、読んでもいない本を開いていた。
20分かかった。男の名前はマルク。リヨンから来た建築家で、学会のためにこの街にいた。自分が魅力的だと分かっている男特有の、少し芝居がかった魅力があった。クレアは彼の冗談に笑った。一度だけ、軽く彼の腕に触れた。数分おきに、部屋の向こうのトムを見た。
トムはこんな妻を見たことがなかった。輝いていて、色っぽくて、完全に主導権を握っている。心臓が速く打っていたが、それは恐れではなかった。
マルクが身を乗り出して一人かと尋ねると、クレアは微笑んで言った。「いいえ。夫があそこに座ってるの。私が楽しんでいるのを見るのが好きなのよ」
マルクはトムを見た。トムはグラスを掲げた。マルクの名誉のために言えば、彼は笑った。最初は驚いて、それから興味をそそられて。
灯台
三人は一緒に上の階へ行った。マルクは礼儀正しく慎重で、ペースを決めたのはクレアで、トムは約束どおり窓辺のアームチェアに座っていた。
そのあとのことは三人だけのものだ。そしてそれは、二人のどちらが想像していたものとも少し違っていた。ぞくぞくする瞬間もあった。あるときクレアはマルクの肩越しに夫を見た。うっとりとして、少し圧倒されたようなトムの表情は、彼女がこれまで見た中でいちばん親密なものだった。
そしてずっとあとで、クレアは「灯台」と言った。何かがおかしかったからではない。急にトムだけが欲しくなったからだ。マルクは彼女の手にキスをして、二人におやすみを言って出ていった。トムは二歩で部屋を横切った。
そのあと
約束どおり、二人は朝の4時まで話した。よかったこと、驚いたこと、二度としないこと、またするかもしれないこと。クレアはずっと緊張していたと打ち明けた。トムはちょうど1分だけ嫉妬して、それがもっと温かい何かに変わったと打ち明けた。
「またしたい?」と彼は聞いた。
クレアは正直に考えた。
「かもね」と彼女は言った。「でも、あなたが望むからじゃない。私たちが望むからよ」
ルールを書いたレシートは今も彼女の財布の中にある。前よりやわらかくなって、少し破れている。どちらも、それを捨てようとは言い出していない。



